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セフォローシャの不在に見るアメリカの影

sefolosha

先日カンファレンス・ファイナルでCLEにスウィープされ、アトランタ・ホークスのポストシーズンは終了した。レギュラーシーズンでは60-22と東1位の成績を残し、ベンチで貢献したセフォローシャは怪我のためプレイオフにすら出ることができなかった。けが人が特に目立った今季においてはそんなに珍しいことではないかもしれないが、セフォローシャの怪我はバスケとは関係ないところでおきた。

4月8日の早朝4時頃、NYのクラブ1Oakを出たINDのクリス・コープランドが何者かにナイフで刺される事件が起きた。アトランタでのホームゲームでサンズに勝利し、東カンファレンス1位の座を確保したホークスは翌日のネッツ戦のためにNYを訪れ、アンティッチとセフォローシャは偶然コープランドと同じクラブに来ていた。そこで二人は事件に駆けつけた警察(NYPD)となんらかのやり取りがあり、結果的にセフォローシャは右足骨折と靭帯の損傷で手術が必要となる大怪我をした。

ホークスのプレイオフ終了を待っていたのか、先日ESPNはセフォローシャの自宅でインタビューを行った。「警察の手によって怪我をして、日常生活にも支障をきたしてる。子供の寝かしつけも階段の上り下りもできない。スイスにいる両親や、兄弟、妻、家族みんなのストレスになったし、僕自身の名誉にも傷がついた。」と事件の詳しいことはまだ話せないものの、事件当初と同様「怪我は警察のせい」とはっきりと口にした。

アンティッチとセフォローシャは警察の妨害、騒乱行為、さらにセフォローシャは逮捕に抵抗した容疑でNYPDに逮捕された。NYPDによるとコープランドの事件現場から離れるように何度も注意したものの二人は従わず、セフォローシャは警官に向かって攻撃的に突進したため取り押さえたという。ところが後日TMZが掲載した動画には複数のNYPDに一方的に取り押さえられ「Relax」と呼びかけるも警棒で足を殴られるセフォローシャの姿があった。その場で見ていた女性がしきりに「やめて!彼は何にもしてないじゃない!ひどい。信じられない。何もしてないのに。」と言っているのも聞こえる。ある証言によると、クラブを出たふたりを警官がしつこく付け回し、そこで何の用かと尋ねたセフォローシャと警官が口論になり、その結果警察に取り押さえられ逮捕されたという。真相は明らかではないが、動画を見る限り少なくともセフォローシャは誰に向かっても突進などしていないことは明らかだ。

セフォローシャの件は全米各地で起こっている警察の、特に黒人に対する暴行と、それに対するデモ運動が頻発する中で起きた。セフォローシャはスイスで生まれ、南アフリカ出身で黒人の父とスイス人で白人の母親を持つ。本人はアメリカにおける黒人とは全く感覚が違うだろうし、NBA界隈含め、彼のことを「スイス人」と捉えている人は多いだろう。けれども、セフォローシャは警官に向かって「攻撃的に突進した」と警察は報告している。これは警察による黒人男性への暴行を正当化する決まり文句になりつつある。

セフォローシャは先日のインタビューで、実は12月に奥さんとNYに行ったときにエリック・ガーナーのデモに出くわしたことを語った。そのとき彼は「NYで人々がデモに参加して自由に発言しているのを見ることができて良かった」とツイートし、「#icouldbenext(次は自分かも)」と付け加えていた。

「僕は外国出身だからアメリカ人やアメリカから出たことのない人とはおそらく物の見方が違う。アメリカに来てみて、黒人が社会的に疎外され何かしらの悪いイメージを持たれているのが目についた。これは実際にあることでメディアでもそう描かれていたりして、それが人種間や収入の格差をますます大きくしてるんじゃないかと思う。」セフォローシャはNBA選手という立場上、アメリカに来てからも平均的なアメリカ人とは異なる世界で生きてきた。ところがNYPDと関わったことで考えが変わったという。「一部の人々が言ってることや体験していることの意味をもっと理解することができた。NBAのチームと契約して渡米するとどうしても一般的な体験はできない。プロのアスリートとして、時には崇められることだってある。だから(今回の経験をしたことで)普段たくさんの人が体験していることに少し近づいた気がする。」

現在NYPDはセフォローシャの件で内務調査を行っており本人も詳しいことはまだ話すことができないが、いずれ警察による暴行に関する問題についてもっと言及したいことを明らかにしている。「(この件に関しては)悲しく、残念に思う。重要な課題だし、僕が語ることで対話が生まれるといい。本当に誰にでも起こり得ることだという証拠になるし、まだまだ話し合われるべき問題だ。」アメリカにおける人種問題の根深さをセフォローシャというスイス人を通じて改めて実感させられた。

(Photo via ProBasketballTalk, AP Photo/Craig Ruttle)

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